カカオ生産者協同組合が立ち上がりました!
カカオキタ社(カカオキタはインドネシア語で「わたしたちのカカオ」の意)がカカオ豆を買い付けているパプア州ジャヤプラ地方のカカオ収穫状況は、2023年は年初から思わしくありませんで した。昨年が豊作だったので、今年は裏年なのでしょうか。
しかし、ピンチをチャンスにという言葉があるように、豆の集荷に苦慮するなかでカカオ生産者たちの間で協同作業を組織化して経済的な力をつけよう、という意欲がわいてきました。
新代表の悩みがきっかけに
昨年カカオキタ社代表のデキーさんが闘病の末亡くなった後、今年 2月にデキーさんの一人息子ハンス(34歳)がカカオキタ社スタッフや生産者の承認を得て代表に就任しました。カリスマ性のある父親の後ろにいつも隠れていて、自信があるのはバスケットだけというちょっと頼りない?ハンス代表。その彼から、カカオ豆の収穫が不調で昨年同時期の半分にも満たず、このままでは日本の消費者にチョコレートを届けられない、どうしたものか、と相談を受けた時、産地のひとつブラップ村の生産者たちは「カカオキタ社を助けてあげなければ!」と買い付けの協力を申し出てくれました。
親戚や知り合いがいる地域を回ってカカオ豆を集め、それをブラップ村の有志で再乾燥・選別して、自社の倉庫で作業する必要がないくらい、きれいな状態でカカオキタ社に売ってくれたのです。お陰様で6トンのカカオ豆を委託加工先のスラバヤに向け出荷することができました。
この経験から、数名のブラップ村生産者が村を越えたカカオのネッ トワークを構築し、一次加工(発酵・乾燥・選別)を行う仕事に本格的に取り組みたいと考えはじめ、それが「協同組合を立ち上げよう!」という動きにつながりました。
組織化の難しさを乗り越え、生産者たちの新たな挑戦がはじまる
ブラップ村とカカオキタ社のお付き合いはかれこれ7〜8年になりますが、デキーさんは最初の頃から協同組合を構想していました。生産者世帯が経済的に自立し、お金をパプア先住民族のコミュニティ内で循環させるために、「みんなで共同体経済を作ろう」と語っていたのです。しかし、生産者のやる気と覚悟が内部から立ち上がってくることを待つという姿勢で、組織化を強制することはしませんでした。パプアの先住民族を組織化する難しさは、彼らの伝統的な生活習慣にもその理由があります。協同作業を必要とする農耕民族と違い、狩猟採集民族のパプア人は単独または身内で行動することが基本で、狩猟の際は犬を数匹従えて一人で森に入って獲物を仕留めるのです。異なった意見を調整しながら目標に向かって人びとをまとめるのは新しい挑戦です。
組合を立ち上げるための話し合いでも、ついつい他人の発言をさえぎったり、一人で仕切ろうとする人が出たりと組織運営が前途多難であることは想像に難くありません。それでも、組合という枠のなかで話し合いをするなかで「誰でも発言権はあるよ」「透明性が大事だよ」という組合運営の民主的プロセスを喚起しながら、設立発起人20名の組合を登記することにこぎつけました。
名前の意味は”穏やかで清涼な川”
組合の名前は、”NGGAPU BU NGALI” (ンガプ・ブ・ンガリ)。ブラップ村があるグニェム地方の言語で”穏やかで清涼な川”という意味で、カカオ産地が広がる地域を流れる美しい清流「カリ・ビル (碧い川)」が組合のシンボルとなりました。
設立目的は「わたしたち、一緒に、民衆経済を築きあげましょう」。デキーさんが民衆交易を説くとき常に強調していた、「生産者と消費者、その他関わる人たちすべてが一致協力して民衆による民衆のための経済(交易)を発展させていく」ということです。理事メンバーには生産者たちの強い要望で、カカオキタ社のスタッフも数名加わることになりました。ハンス代表は「組合活動を通じて鍛えてあげる」という生産者の意向で、副専務理事に指名されました。
カカオ生産者とカカオキタ社が協同組合のなかでがっぷり四つに組んで新たな可能性に挑戦します。どうぞご期待ください!
津留歴子(つる・あきこ/カカオキタ社)
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