レポート

【バナナニュース345号】ブハイ村のアイマさん~ミンダナオ島コタバト州マキララ町~

2023年11月30日

 2023年8月初旬に実施されたバナナ担当者産地視察(通称バナ担ツアー:バランゴンバナナを扱う生協・団体の担当者による産地視察、生産者との交流)で訪れた、ミンダナオ島コタバト州マキララ町のご紹介です。

※同ツアーで訪問した南コタバト州レイクセブもこちらで紹介しています。

  • コタバト州の出荷団体・ドンボスコ財団

 コタバト州マキララ町は、2013年からバランゴンバナナの民衆交易に参加した比較的新しい産地です。出荷責任団体であるドンボスコ財団(1988年組織化、1994年正式登録)は、バイオダイナミック農法を推奨・実践しており、自ら管理する圃場にはバナナだけでなく多種多様な動植物が共存しています。まずはその景色の美しさに魅了されました。

水も豊富で、パッキングセンターで洗浄に使う水は山から引いています。ドンボスコは、多国籍企業のプランテーションが広がり農薬散布で水源が汚染されることを避けるため、ヨーロッパの財団からの助成金で土地を購入し、土地を持っていない人びとに分配、彼らの収入源とすべくバランゴンバナナの出荷を始めました。

 

  • 4年前に大きな地震を経験

 今から4年前の2019年10月、この地域を震源とするマグニチュード6規模の地震が数回発生し、生産者を含む住民、コミュニティ、そしてドンボスコも、地崩れによるインフラや建物の崩壊など、甚大な被害を受けました。今回訪れたのは、地震の後、新たな土地に再建されたドンボスコ財団とブハイ村役場です。

※当時の被害状況や復興支援についての記事はこちらをご参照ください。

地震発生

続報

復興支援報告

地震前のドンボスコ財団の敷地には教会が建っていました。ベッツィさん「何も建ててはいけないことになっているが、神様が許してくれると信じているのでしょう」
道の反対側にはきれいな川が流れていました。

              

  • バランゴンバナナの産地 ブハイ村

 ブハイ村役場(バランガイホール)で出迎えてくれたのは、村長(チカさん・40歳)の妻でマラナオ族出身の生産者アイマさん(37歳)と、バゴボ・タガバワ族の120を超える世帯のリーダーであるインボックさん。

ブハイ村の住民は2,119人、465家族、419世帯(2023年8月訪問時)。村役場はドールのバナナプランテーションを抜けた小高い丘に建っています。昔このあたりはゴムやコーヒーの栽培が盛んで、その収入で学校に行けたそうですが、コーヒーの価格が下がりバナナに切り替わったとのことです。アイマさんの圃場はここからさらに遠く標高が高いマリワナグ集落にあります。

 アイマさん「バランゴンバナナの出荷は地震の後から始めました。点在する3haの土地に1,000株、少しずつ増やしています。以前畑の中にあった小川は地震でなくなってしまったけど、日本からのカンパでもらったホースを使って今は別のところから水を引いているのでエルニーニョ(フィリピンでは雨が少なくなる)でも大丈夫。バランゴンは農薬を使わないし、費用もそれほどかかりません。まだ子どもが小さくてお金がかかるので、苗があればもっと増やしたい!」と意欲満々なアイマさん。「子どもは8人いて、1番上は20歳の大学生、一番下は生後4ヵ月。女の子は2番目の1人だけ。自分は17歳で結婚して高等教育は受けられなかったけど、子どもたちはきちんと卒業させてあげたい」と涙ぐむ場面も。ドールの農薬散布による被害はないか尋ねると、「バナナの圃場は遠いから被害はありませんが、住んでいるところでは以前は夜中の1~2時頃に農薬をスプレーしていて、時々臭くて目が覚めることも。ドールに訴えて今はその時間の散布はなくなりました」。

 ドールがこの地域に来たのは2000年ぐらいで、土地を持っていない人たちはドールで働いているそうです。パッキングや花芽落とし、スプレー散布、花芽への注射などの仕事をしています。

ドンボスコ財団代表のベッツィさんは、「生産者の仕事になるからドールにはいてもらいたいが、オーガニックに移行して欲しいと願っている。以前ドールの上層部の人がドンボスコにきてその風景に驚いていた」と話してくれました。最後にインボックさんが語ってくれた夢は、「ゆくゆくは出荷量を増やして自分たちのパッキングセンターを作りたい。今の2倍ぐらいの量になればできるが、今の量も強風が吹くと半減してしまう」とのせつない思い。インボックさんはいわゆる篤農家で、彼が育てるバナナは1株で1箱作れる(通常は半箱くらい)そうですが、自然環境に委ねる部分が多いバナナ栽培は、なかなか思うようにいかないのが現実です。

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