オーガニック?フェアトレード?マスコバド糖のギモン

2024年7月12日

今回は、マスコバド糖に対するご質問で特に多い有機認証やフェアトレードに関することにお答えします。

Q.マスコバド糖は有機?

ATJが輸入・販売するマスコバド糖は有機JAS認証を受けていません。発売当初は日本だけだった販売先も、各国に増え、現在では海外の有機認証を取得し、各国のフェアトレード市場にも広がっています。

それではなぜATJは有機JAS認証を取得していないのかと言うと、「サトウキビ生産者の暮らしを応援していくこと」を目的としているので、すでに海外の有機認証を取得したものだけではなく、有機栽培に興味を持ち、転換を始めた生産者から出荷されるサトウキビも使用しているためです。転換期間中も海外の有機認証の基準に沿った栽培がおこなわれ、化学合成農薬や化学肥料は使用しません。

なお、「有機認証=無農薬」と誤解される場合が多いですが、有機認証でも使用が許可されている農薬もあるので、有機認証=無農薬というわけではありません。また、「有機JAS」マークがない農産物、畜産物及び加工食品に「有機」や「オーガニック」などの名称の表示は法律で禁止*されていますので、現時点で「有機の黒糖」や「オーガニックシュガー」などと称して販売することはできませんのでご注意ください。

*農林水産省「有機表示について」より引用
有機JAS認証に詳しく知りたい方はこちらから

Q.マスコバド糖はフェアトレード?認証は受けてる?

SDGsの盛り上がりなどもあり、フェアトレードマークが付いた商品を見かける機会が増えていますが、マスコバド糖は国際フェアトレード認証ラベル(FLO)を付けて販売していません。また、ATJは世界フェアトレード連盟(WFO/旧IFAT)にも加盟していないので、パッケージにもこれらのマークは付いていません。

元々、フェアトレード商品であることを伝えるツールとして使われ始めた認証マークですが、人と人が出会うことで始まった民衆交易の第一号商品であるマスコバド糖は、取り組みの経緯や生産者のストーリーを直接伝えることでマークを付けないで販売してきました。マークがあると一目でわかりやすいですが、認証を取得するにはお金もかかり、新たにサトウキビ栽培に加わった生産者が容易に対応できるものでもありません。有機認証制度と同様に、様々な段階にある生産者の現状をサポートすることを優先したいという考えから、認証は取得していません。

でも、ご安心ください。マークがないと「フェアトレード」と言えないわけではありません。フェアトレードは、法律で規定はされていないので企業や団体が独自の基準を設けて取り組んでいる場合があります。ATJもそうした団体の1つで、民衆交易も広義のフェアトレードになります。フェアな取引を行っている商品すべてに必ずしもマークが付いているわけではないのです。

マスコバド糖の民衆交易が始まるきっかけとなったサトウキビ農園の労働者がそうであったように、もっとも支援を必要とする社会的・経済的に弱い立場におかれた生産者にとっては、第三者認証は教育水準や経済的理由から取得が難しいこともあります。だからこそ、(外部機関による)第三者認証に縛られるのではなく、生産者と消費者の信頼と合意に基づいた基準や認証を大切にしています。産地の状況や生産者に寄り添い、その関係を第一にすることは、ATJが取り組んでいる民衆交易が大事にしている理念でもあります。

パッケージの向こう側に込められている大変見えづらい想いではありますが、私たちはこれからも生産者のニーズを聞き取り、サポートをしながら、マスコバド糖のストーリーを伝え続けていきます。

大久保ふみ(おおくぼ・ふみ/ATJ)
黒澤仁実(くろさわ・ひとみ/ATJ)

【動画】気候変動がエコシュリンプ産地に与える影響

2024年7月5日

地球温暖化により海面水位が上昇し、特に太平洋の海抜の低い島々では住民の暮らしを脅かす事態になっていることはご存知の方も多いと思います。インドネシアのエコシュリンプ産地も世界的な気候変動の影響を受けている地域の一つです。

産地の一つ、南スラウェシ州ピンラン県では、海岸線の近くに養殖池が広がっています。しかし、近年の多雨による高潮被害のため、海岸浸食が進んでいます。中には過去5年間で海岸線が5~50メートルも後退し、かつて養殖池があった場所が海の一部になってしまった地域もあります。波が強く海水が養殖池に直接流れ込み、高い土手を増築しても強い波が押し寄せて崩壊した例もあります。

(動画より)

また、エビは水温や水位の変化に敏感です。ジャワ島・グレシック地域の生産者は「生産性の低下は、気候変動の影響が最も大きいと感じる。雨が降り続いたり、曇りの日が続くと水温が下がり、エビが死んでしまう」、「以前より降水量が増え、養殖池の塩分濃度が下がる。雨季には淡水と同じくらいの濃度(注)になり、ほとんどのエビが死んでしまう」と話しています。

(注)エコシュリンプは海水と淡水が混じる汽水域で育ちます。

こうした状況を受けて、南スラウェシの生産者はグリーンコープ生活協同組合連合会(以下、グリーンコープ)の支援を受けて2022年8月に3,854本のマングローブを植えました。マングローブの地上の根は土壌浸食を防ぎ、土を保持・ろ過する機能があります。その結果、海面が上昇しても土地を維持する機能があるそうです。残念なことに同年12月に発生した高波で、このうち90%以上が失われてしまいましたが、2023年春に6,146本のマングローブを植え直しました。

マングローブ植林は、2027年までに事業で排出している二酸化炭素をゼロにしようとするグリーンコープの「2027カーボンニュートラル」の取り組みの一つです。この動画は今年2月、「2027カーボンニュートラルの実現に向けて」の審議が行われたグリーンコープ共同体の臨時総会で、マングローブ植林の背景と取り組みについて報告する目的で制作されたものです。

4名の生産者が気候変動がもたらしているエコシュリンプ養殖への影響やマングローブ植林の重要性について語っています。養殖池の様子とあわせて是非ご覧ください。

PtoP NEWS vol.62

2024年7月2日

PDFファイルダウンロードはこちらから→PtoP NEWS vol.62

【バナナニュース352号】ラムラハック村のおばあちゃんと孫~ミンダナオ島レイクセブ~

2024年6月27日

~バナナ担当者小島の出張見聞録⑤(不定期で掲載します)~

バランゴンバナナの買付作業には井戸端会議のようなどこか楽しげな雰囲気がある。

ミンダナオ島、ラムラハック村(ロサリさんと同じ村のもう1つの集荷場)

ミンダナオ島、バラグナン村

ネグロス島、マンティケル村

そんな中、集荷場で真剣に買付作業を見ている女性がいた。生産者の妻のロサリ・ジャン・グンパンさんだ。出荷基準内の自分のバナナが買取られているかを確認していたという。

集荷場で真剣に買付作業を見ている様子(右側ピンクの服がロサリさん)

地面に落ちているバナナは、キズ、未熟、過熟、病害などで廃棄されたバナナ。レイクセブは山奥からバナナを運ぶ生産者が多く、どうしても傷が付いてしまうことも。

★馬がバナナを運ぶ様子(当日は雨が降って土がぬかるんでおり、馬は時折滑りながら下山)

キズバナナを箱に詰めて出荷してしまうと、日本に着く頃には箱のバナナ全てが傷んでしまうので、キズバナナを買取ることはできない。規格外バナナは生産者が消費するか、畑のたい肥や家畜のエサとして活用する。

何故真剣に確認していたのか?と聞いたところ、ロサリさんから「馬を借りて、合計4袋分のバナナを運んできたが、馬は2袋までしか運ぶことができず、片道一時間半の道を2往復した。また、往復数を減らすためにも予め品質の良くないバナナは圃場で捨ててきたから」という返答があった。
因みに、重い荷物を運べるおとなの馬を購入できると良いが、価格が高いので、仔馬を購入する人が多い。2~3年を経て成体になるが、その期間は餌代だけがかかる。

彼女は真面目な性格の方のように思われた。畑仕事に関しては、圃場が自宅から遠いこともあり、月に1度、1週間から長ければ1か月間泊まり込みで畑の手入れをみっちり行う。学校がなければ孫たちも圃場に連れて行き、畑仕事の様子を見せている。

3haほどある圃場には、土壌流出を防ぐための竹や樹木があり、バランゴンバナナの他にトルダンバナナとココナッツも栽培。圃場では、バナナの周りの草刈りを行い、しっかりと成長するようにしたり、株元には土を盛り、倒れにくくしたりしている。「農薬は一切使っていないから、安心して食べてほしい。孫にだって食べさせているのだから」とアピールしてくれた。

彼女はバランゴンバナナの収入の一部を孫の教育費に充てている。孫のチニータ・グンパンさんが私立小学校に通っており、バランゴンバナナの定期的で安定した収入はとても助かっているという。ロサリさんから「この子が良い成績をとるのが、私の目標」とプレッシャーの掛かる言葉があったが、チニータさんも勉強は嫌いではない様子。将来の夢などはまだ特に無いようで、「今は色々なことを学び、視野を広げて決めたらいいわ」と周りは温かく見守っている。

~バナナ担当者小島の出張見聞録①はこちらから~

~バナナ担当者小島の出張見聞録②はこちらから~

~バナナ担当者小島の出張見聞録③はこちらから~

~バナナ担当者小島の出張見聞録④はこちらから~

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よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。

<今月のおいしい!②>パペダの作り方

2024年6月6日

「今月のトーム!(おいしい)」はカカオの産地、インドネシア・パプア州の日常食です。

※「トーム」は現地の言葉で「おいしい」という意味です。

サゴヤシはニューギニア原産のヤシ科の植物です。現在ではインドネシア、東ティモール、マレーシア等にも分布しています。その最大の特徴は、幹にでん粉を大量に蓄積することです。このサゴヤシでん粉は、古くからパプアの人びとの重要な主食になっています。サゴヤシからパペダまでの加工法について説明します。

〇サゴヤシの木

〇サゴヤシ粉末を作る

〇サゴヤシ粉末から澱粉を取り出す工程

ここからは女性の仕事です。

〇パペダの作り方

〇パペダの食べ方

1本のサゴヤシからは3〜4ヶ月分の澱粉が取れます。半年に1回程度作業するそうです。作業は1日〜2日くらいかかりますが、森から主食の材料が賄えるのですから、パプアの自然の豊かさをつくづく感じます。

現地取材 義村浩司(カカオキタ社ボランティア)

まとめ 小林和夫(ATJ広報室)

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◆前回の記事はこちら→<今月のおいしい!①>基本は「パペダとおかず」

インドネシア・パプア州に住む先住民族の日々の食事をブラップ村のカカオ生産者エリザベスさんに聞きました。

<今月のおいしい!①>基本は「パペダとおかず」

2024年6月6日

「今月のトーム!(おいしい)」はカカオの産地、インドネシア・パプア州の日常食です。

※「トーム」は現地の言葉で「おいしい」という意味です。

エリザベス・タルコさんはカカオ産地のブラップ村に住んでいます。カカオ生産者組合のメンバーで、夫のヤフェットさんは組合の代表です。8人家族で子どもは男4人、女2人です。

エリザベスさんと末っ子のフェリー(手前)。フェリーはいつもお母さんにくっついている甘えん坊です。

サゴヤシの澱粉から作るパペダは、パプアの先住民族にとって古くからの主食です。ジャワからお米が持ち込まれ、パプアの人びともご飯が好きですが、買わないといけないのでお金がかかります。ですから、エリザベスさんの家では今でもパペダが主食です。サゴヤシ澱粉を水で溶き、煮立ったお湯を注いでかき混ぜると、ドロッとしたパペダの出来上がり。温かいうちに食卓にのせ、魚スープや野菜と一緒に食します。

蝋燭野菜

今日のおかずは、パパイヤの花炒め、森に自生する「蝋燭野菜」と呼ばれる植物の茎のなかにある綿状の部分を煮込んだココナッツスープ、サトイモに似た食感のクラディというイモを蒸かしたものです(一番上の写真、右から時計回り。上にあるのがパペダ)。

パパイヤの花はパプアで最も好まれている野菜のひとつです。パパイヤは成長が早く、パパイヤの葉や花はいつでも簡単に採取できます。味は苦みがあり、調理のときは炒める前に塩もみし、さらに茹でて苦みを飛ばしたりします。しかし、この苦みがマラリアの予防になると人びとは言っています(マラリアの薬の苦さと似ています!)。

家では料理をテーブルの上に置いて、家族は好きな時間(基本はお昼と夕方2回)に各自食べるという感じです。食べる場所も庭先だったり各々好きな場所で食べています。食卓を囲んで家族全員「いただきまーす」と言って一緒に食事をとることはないのです。

食材は森や川、海から調達!

調味料を別にすれば、サゴヤシ澱粉はもちろん、食卓にあがる多くの食材は畑や森でできたものです。肉は狩猟で獲ったイノシシや鶏の肉を食べます。鶏肉は、町で買ってくることもありますが。肉や魚は村の中で売り買いがあります。魚や肉の余剰を村の中で売るのです。海や川の幸も食卓に並びます。魚や貝、エビやロブスタなど。魚の燻製も作ります。

パプアの人びとは、全能の神が生活に役立つさまざまな種類の野菜や植物を与えてくれたと信じています。食材を見ると本当にそう感じますね!

※サゴヤシでん粉の加工方法はこちらから → <今月のおいしい!②>パペダの作り方

現地取材 津留歴子(カカオキタ社顧問)

まとめ 小林和夫(ATJ広報室)

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◆コラム「今月のおいしい!」では、産地の食事や食文化について紹介していきます。
前回の記事はこちら→乾季にはこれ!「サユールアサム」
エコシュリンプ加工場の工員さんの家庭で暑い乾季に食べられているインドネシアの家庭料理が登場します。

【バナナニュース351号】干ばつに負けずに育てたバナナです

2024年6月4日

昨年8月頃よりエルニーニョ現象が発生しており、2~4月頃よりフィリピン全体で乾燥状態や干ばつが起きています。乾燥により水分が不足すると、バナナの果実の発育が妨げられて品質が低下したり、幹が折れて収穫できなくなったりします。また、酷暑が続くと、バナナの実が黄色くなったり、皮の組織が壊れて黒くなったり赤くなったり、出荷のための品質基準に満たないバナナも多く出ます。

バランゴンバナナの産地は4つの島、8つの地域にまたがっていますが、エルニーニョ現象による乾燥状態や干ばつの影響は地域によって大きく異なっています。

同じネグロス島内でも、通常とあまり変わらない出荷数量を維持できている産地もあれば、出荷数量を大幅に減らしている産地もあります。全体として、開けていて日陰がない圃場や標高が低い産地にある圃場は高温や強烈な日差し、雨不足の影響を受けやすい状況があります。

一方、日陰がある圃場は酷暑や強烈な日差しを免れられることや、ミンダナオ島などの標高が高い産地にある圃場は山間部で比較的気温が低いことや朝晩は霧が出て湿度が保たれることなどから、雨不足などの影響が小さく、生産性を維持できています。

標高の高い地域で午後に霧が出てきた様子

また、産地では日本への安定的な出荷のために頑張って苗を植え付けていますが、干ばつの影響の小さいミンダナオ島などでも、せっかく植えた苗が水不足で十分に成長できない状況や半分ほどダメになってしまうような状況が起きています。そうした中、バランゴンバナナの出荷を担うオルタートレード・フィリピン社では、生産者団体に対して新しく植える株や肥料の鶏糞の支援などを行っています。

なお、ネグロス島やミンダナオ島では猛暑により学校の授業がお休みあるいは午前中のみとなったり、オルタートレード・フィリピン社のスタッフが猛暑で体調を崩したりもしていて、異常気象がバナナ栽培のみならずフィリピンの人びとの生活に様々な影響を及ぼしていることを感じます。

産地による違いはありますが、全体的には日本の消費者の皆さんへの販売に十分な数量のバナナが出荷されています。

干ばつに負けずに育てたバナナ、是非たくさん食べていただけると嬉しいです!

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よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。

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